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ゼロからはじめる巨大オオクワガタの育て方
ゼロからはじめる巨大オオクワガタの育て方
ゼロからはじめる巨大オオクワガタの育て方★上級編
加藤
本文中で紹介されている80mmオーバーの血統オオクワは、GSP系統です。 |
みなさん、こんにちは。
巨大オオクワガタの育て方、上級編をお届けします。
今回は実際に我が家で出現した82.7mmのオオクワガタのことを具体的にとりあげながら、特に大きさ、ということに関して私なりのこだわりやちょっとしたコツなんかも書いていけたらいいなと思っています。
80mmって、ホントにでかいです。
感動ものです。
上級者を目指す人もそうでない人も、参考にしていただけたら幸いです。
第一章 種親の選び方
今では、もうわりとあちこちで言われていることですが、大きくなる素質、というのは確実に遺伝します。
1999年、私はK誌で「オオクワガタの体型及び大きさの遺伝による影響」という記事を書き、大きさと形が遺伝するという考察を飼育データつきで示しましたが、たぶんそれが最初だったんじゃないでしょうか。
(大げさなタイトルでしたが一応某国立大学の生物化学専攻の大学院を卒業した身なので、素人のたわごとではない事をわかってもらえれば幸いです。)
逆にいえば何代も繰り返しても(人工的な、たとえば菌糸ビン飼育では、等という注釈はつきますが)大きくならない血統というのが存在するのも事実です。
血統、という言葉が正しいかどうかわかりません。
本文ではある1ペアから始まって、その子孫の兄弟姉妹で累代飼育を続けている系統をわかりやすく血統と呼ぶことにします。
自然界ではよほど他産地と離れて狭い分布域でないと現実的には起こりえない現象でもあります。
私は昔から佐賀産が好きで、というより、もう20年以上前むし社 藤田編集長が名古屋に来たときに見せてもらった、その当時新産地としてブレイクしていた佐賀産の大歯型♂の無骨なかっこよさに魅せられて以来、現地の友人、知人たちからたくさんの佐賀産ペアを送ってもらい、飼育してきました。
まだ産地別、といった概念がないころでしたが、確実な採集ラベルがあるものだけにこだわって累代飼育を続けたところ、1995年S氏により佐賀市北川副町で採集されたペアと、その翌年M氏による神崎郡千代田町採集のペアの子孫、この2血統がとても大きくなることに気がつきました。
95年のペアは♂43mm、♀32mmほどでしたが、次々世代ですでに80mmほどの♂が羽化してきました。
まだ世間に80mmオーバーは出現していない時代です。
ノギスの測り方によっては80の目盛りを越えるその個体を、私は恐れ多くて四捨五入しても80mmにならないように79.4mm、と公称していました。
その年の夏、福井県から初めての80mmオーバーのニュースが発表されて大騒ぎになったのは皆さんご存知のとおりです。
その後、大きさという点ではこの2系統を中心に累代飼育を行ない、時折80mmオーバーの個体が得られ、楽しい思いをさせてもらいました。
が、欲というのは果てしないもので、80mmオーバーといっても80mmぎりぎりで、しかも体がパンパンで羽化不全も多い、累代が進むにつれ兄弟の大きさにばらつきもでてきたこともあって、新しい血を入れてみようという気にもなりました。
そこで、ネットで知り会えた全国の友人らにお願いして、そのとき日本で大型血統といわれる血統をペア交換という手段で集めさせてもらいました。
中には産地が関西など佐賀から離れた個体もありましたが、一応実験ということでいろいろな組み合わせを試してみたところ、大型血統でも異血統同士の掛け合わせは次の世代では必ずしも大きくなるわけでもないこともわかってきました。
その中で、熊本県の達人Iさんから送られてきたGという血統の♂と、我が家の佐賀産の♀のペアから生まれた子供たちが、羽化♂18頭中6頭が80mmを越えるという突出した結果となりました。
この素質は遺伝するだろうか、楽しみに待ったその次世代は、冒頭の82.7mmを筆頭にやはり超大型がたくさん羽化してきたのです。
もちろんこのころには私自身の大型を羽化させる腕も上がってきたのか、基本となる佐賀産の純粋な血統でも80mmはコンスタントに羽化させることができるようになっていましたが。
いきなり話がそれていきそうです。
私はこれまでに多くの80mmオーバーという個体を羽化させてきましたが、それは10年以上にわたる良血統の選抜の結果だということと、80mmという大台を狙うには種親選びがいかに重要であるかをわかってもらうために書きました。
そんなこといっても、皆さん、家にいる血統が大きくなる遺伝子を持っているかどうかなんてわからないじゃないか、というときに、入手先の情報が重要なんですね。
最近のショップのオオクワガタは、どれもこれもみんな一緒に入荷、なんてことは少ないはずです。
少なくとも店長さんは国産オオクワならそれがどんな経歴を持って店に入ってきたかわかるはず。
そのあたりを入念にアドバイスを受けた上での入手をお薦めします。
ただし、血統などそう重視しなくても、ちゃんとした飼育法さえマスターすれば77~78mmくらいの♂までなら充分育てるのは可能です。
私の経験からいっても、どんなにがんばっても74mm位までしか育たないっていう血統もたしかに実在しましたが、とても少数でした。
余談になりますが、体や大あごの太さ、ディンプルのあるなしなども遺伝しやすいですね。
ただ、大きくなる素質よりはばらつきが出やすいようです。
もともと表現形質の遺伝は、チロシナーゼの欠損で起こる白子(アルビノ)のような単純なものではないですから、これはいたしかたないようです。
独断と偏見の経験から言わせてもらうと、形は♂親から、体の大きさは♀親から引き継がれる場合が多いようです。
第二章 ペアリングと産卵セット
産卵材の加湿は大量の水に沈めると腐敗することもあるので、バットに張った水の上に並べ、上の切り口の色が変わるくらい水を吸い上げたくらいでちょうどいいです。
過湿はよくありません。
このしみ込ませる水に、グルタミン酸ナトリウム(化学調味料や旨味調味料といわれるもの)や幼虫の糞を溶いて入れると産卵数が増えるという話があります。
私もやったことはあるのですが、確かにいい結果になっているような気はします。
データはとっていないので参考程度にしてください。
それから、ケースの中で産卵材がぐらつくような場合には明らかに♀は産卵を嫌がります。
何本かを上手く組み合わせケースの中で動かないように固定して隙間を以前に幼虫を割り出したカス(若令幼虫の食痕や糞が混ざったもの)で埋めてください。
細い材の場合は数本を針金などでくくるのも効果的です。
第三章 幼虫の割り出しと飼育
1ヵ月半から2ヵ月後に割り出した若令幼虫はなるべく早く菌糸ビンに投入してください。
プリンカップなど小さな容器での保管はあまりよくありません。
また、投入する容器の大きさは広口の550mlくらいがベストでしょう。
また、80mmの大台を狙うのにはエアコンなどで夏場の温度を26℃程度まで下げることのできる環境は必須条件です。
そのほか、大きな音や振動のないところでの飼育を心がけてください。
私が使っている菌糸ビンのメーカーはGポットです。
だいぶ以前、若令幼虫には麦芽を粉砕したものなどを添加して詰めなおして使用していましたが、現在流通しているものはもうそんな必要もないほど高品質になってきていますので、必要なときにすぐ手に入ることを重要視しています。
菌糸ビンの交換は状態を見ながらでいいのですが、経済的に許されるなら、最初は55日、その後は80日で決めてかかってもよい結果が出ます。
巨大化する幼虫ほどビンの中心で居食いを決め込むので食痕の状態は濃い黄土色のねっとりしたとてもいい状態で、中心部を動かないため外からは白いビンのままに見えます。
この状態で交換をさぼるとだいなしですので、定期的な交換をしてやるわけです。
反対に真っ黒な食痕や幼虫の通過痕がボソボソに見えるのはあまりよくない状況です。
それまで使っていた菌糸ビンの食痕の一部を一緒に入れてやるという方法をよく聞きますが、私はやったことがありません。
第四章 前蛹から羽化まで
最初の交換で24g以上、1.5リットル以上の容器で2度目の交換30g以上を計測できれば80mmはもうすぐそこです。
ただし、私のまわりでも30gまでは育つのだけど、蛹化してくれない、または蛹にはなったけど羽化不全で死んでしまう、という声はよく聞きます。
これも血統なのかもしれません。
これから先はもう運任せという気もしますが、少なくとも飼育者の不注意で失敗するのは防ぎたいものです。
一番多いのが交換後暴れまくって体重を落としてしまうという事態ですが、これは交換の菌糸ビンの温度を少し冷やしておくことでかなり解消できます。
暴れの原因は酸欠であることが多く、これは菌糸の活性化によるものです。
白く張り巡らされたキノコの菌糸は幼虫に食い破られることにより再生しようと活性化し、その結果酸素を消費し二酸化炭素を出します。
二酸化炭素は空気より重いため容器の底に滞留してしまうというわけです。
これを防ぐには容器の温度を少し下げて幼虫、及び菌糸の活性を緩やかにしてやること、交換直後はフタをせず通気性のよいものをかぶせておくとか、循環扇を強力に効かせることなどが有効です。
最終的に蛹室を作るだけになった終令幼虫の場合はもうエサは食べないので、わざと850mlとかの小さめの容器に入れて横置きするのもひとつの手です。
少し温度を上げてやれば、幼虫は暴れるスペースがないのを感じ取るとさっさと蛹になる準備を始めます。
850mlの容器でも横に蛹室を作れば80mmの羽化は充分可能ですし、横置きにすることで、空気より重い二酸化炭素は外に逃げやすくなります。
ウチの80mmオーバーの半分くらいはこの方法で羽化させました。
ただし、どうしても大型だと羽化しにくい傾向にはあります。
冒頭の82.7mmの、幼虫時の最大体重は35gほどでしたが、実はこの兄弟で40gを越える幼虫もいました。
この個体は羽化すれば85mmに迫りそうな蛹になりましたが、蛹の状態でも見るからに背中の小楯板のあたりが平らになっていておかしい、案の定この蛹は羽化時にうまく上羽を伸ばすことができず、死亡してしまいました。
以上で今回の講座を終わります。
私の場合、対馬から北海道まで、友人たちの協力で各産地の系統をたくさん集め、その最大型を羽化させる事で形の違いなどを楽しみたいと思っていますので、各系統の個体数は毎年10~20頭程度です。
文中に出てくる超大型血統もこの程度の数しか増やさないのでサンプル的にはまだまだだなぁとは思っているのですが、一応20年以上オオクワガタとまじめに向き合ってきた経験を元に執筆しました。
同様の飼育方法でタイワンオオクワガタ80.7mm、グランディスオオクワガタで84.5mm、クルビデンスオオクワガタでも82.5mmが羽化しています。
また、今回は♂の大きさについて書いてきましたが、大きくなる遺伝子というのはもちろん♀にも関与していて、大型血統の♀はちゃんと管理してやれば53mmオーバー、最大は55mmほどにも達します。
最近はオオクワガタも抽象的な形のかっこよさ、という基準で語られることが多いようですけど、具体的にノギスの数字で示される「大きさ」というのもオオクワガタという虫にとってはかっこよさの重要な基準だと思っています。
素質ある個体を、最高の飼育技術とわずかな運で育て上げることができたとき、結果はついてきます。
皆さんもぜひとも80ミリという大台を手にしてみてください。
私個人的には、ありえないといわれてきた国産85mmオーバーを育ててみたいと思っています。
以前から出現していた80mmたちは体がはちきれんばかりにパンパンで、それこそ種の限界を示していたようなんですが、手元の82.7mmの個体は、誰に見せても「普通の顔をしている」んですよね。
腹部が大きいわけでもなくそれこそ75mmくらいの、まさに国産オオクワガタの相似形です。
この血統であれば、兄弟で40gまで育った幼虫もいたわけですし、もしかしたら、なんてひそかに期待しています。
加藤氏ご本人より本文原稿をご提供いただきました。
本ページの文章著作権は加藤氏に帰属します。
文章の無断使用・転載等・固くお断り致します。
弊社は、加藤氏ブリード個体 正規取扱店です。 |
有限会社ドルクスダンケ 坪内より |
2009年07月16日、BE・KUWA 美形コンテスト(記念回時)・ホペイコンテスト(常時)の審査員もつとめる加藤隆行氏に来社いただきました。 過去に何度かお会いしたことはありますが、先日久々に加藤氏よりメールをいただき、久々の再会でした。 加藤氏は、虫の知識が深く、また虫が好きでたまらない気持ちが強い方です。 クワガタの話で盛り上がり、2時間ほどお話を聞かせていただきましたが、とても楽しい時間を過ごすことが出来ました。 また、今回再会出来たことで、加藤氏ブリードオオクワのうちでの取り扱いが決まりました。 マニアの方ならご存じだと思いますが、加藤氏ブリード個体『GSP血統』と呼ばれているオオクワガタです。 『GSP血統』は、♂80mmオーバーの作出率が3割を超える驚異的な遺伝子を持ったオオクワガタです。 長年オオクワ飼育をされている方でしたら実感出来ると思いますが、80mmを超えるオオクワを、作出することは正直に言って至難の業です。 80mmを超えるオオクワの資質を持った種親を何代・何年もかけて選別し作り上げていくか、資質を持った種親を手に入れるかをしないと作ることは出来ません。 偶然で出てくるサイズでは決して無いのが、80mmオーバーのオオクワガタです! 限られたブリーダーだけが作ることが出来る、いわゆるステータスサイズです! 加藤氏ブリード個体正規取扱店として、 加藤氏から譲り受けることに決まりました。 加藤氏自署の証明書も添付されます。 限られたブリーダーだけが作ることが出来る、ステータスサイズ! 80mmオーバーのオオクワ♂! 加藤氏ブリード個体なら夢ではなくなります! あとは、正しいブリードテクニックをマスターすること!(^^)v |
巨大オオクワガタ作出に欠かせないのは ◆代表 坪内より 大型個体作出用の菌糸瓶として多くの方に、タイプG菌糸瓶を ご愛用いただきたくさんのご注文をいただいています。 http://www.e-mushi.com/f/type-g.html タイプG菌糸瓶は、私自身が大型作出をさせる目的で テストと改良を重ねてきた菌糸ビンになります。 トップブリーダーの加藤氏の元でも毎年好結果が産まれいます。 http://www.e-mushi.com/f/type-g.html たしかに、種親のDNA抜きには80mmを超えるオオクワを作ることはまず無理です。 しかし、そのDNAの持つポテンシャルを最大に引き出すのは菌糸ビンの質であることは間違い有りません。 DNAと最良の菌糸ビンが有ってこそ、初めて80mmを超えるオオクワガタを作ることが出来ます。 もちろん、80mmを目指していなくても、安心・安全に少しでも大きなオオクワガタに育てることが出来る菌糸ビンでもあります。 私自身が使いたいと作り上げたタイプG菌糸瓶が多くの方の元でも好結果が出ることを願っています。 |
https://www.e-mushi.com/f/type-g.html
2015年飼育レポート
https://www.e-mushi.com/f/type-g-kt_2015.html
2014年飼育レポート
https://www.e-mushi.com/f/type-g-kt_2014.html
2013年飼育レポート
https://www.e-mushi.com/f/type-g-kt_2013.html
2012年飼育レポート
https://www.e-mushi.com/f/type-g-kt_2012.html
2011年飼育レポート
https://www.e-mushi.com/f/type-g-kt_2011.html
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